安倍晋三、大ハンガリー主義者になる。国際問題必至のニセ動画は如何に拡散したのか

 Yotube上にアップロードされた日本の国会動画が、なぜかハンガリーで拡散されている。確認して見ると、新型コロナウイルス対策について話しているだけの普通の動画である。

 ただ、書かれているハンガリー語の字幕が全くの出鱈目ということを除けば。

 この動画が投稿された6月4日はハンガリーにとって重要な日とされる。ちょうど今から100年前に、第一次世界大戦の敗戦国となったハンガリー王国はトリアノン条約により国土の七割、人口の五割を失ったためだ。

 以来、一部のナショナリストたちは、この屈辱の条約により失われた国土を回復し大ハンガリーを再建したいと願ってきた。

 そして、右派のオルバン政権は6月4日を国民連帯の日として制定した。

 その国家的な記念日において、一つの動画が投稿された。概要欄には「共有してください!ハンガリー人は一人ではない!」と投稿者のコメント。

 6月2日の日本の国会とされる動画では、トリアノン条約追悼会が開かれ、日本と同じように、ハンガリーが戦勝国によって国土を奪われたことは容認できないことだと言う。安倍首相は、ハンガリーを国境で引き裂くことは出来ないとし、ツラン民族の兄弟である日本人はその歴史的な闘いに賛同することを表明 (汎ツラン主義 20世紀に広まったマジャール人や大和民族は同祖であるという考え)

発言者が立憲民主党の福山哲郎議員に変わり、さすがに野党からは冷静にツッコミがされるかと思えば、ダビデとゴリアテの喩えを出し、「不屈の意志で東京は世界と戦う」「真の日本人は行動しなければならない」と語気を強めて賛同。

茂木外務大臣は「ヴェルサイユ条約は全く無法なものである」と証言。

加藤厚生労働大臣も「奪われた領地を祖国に奪還するため協力しなければいけない」ともはやこれから宣戦布告をしそうな勢いに。

最後には大きくテロップで「彼らに感謝しよう!彼らは我々を忘れていない!」と表示される。

この”感動的”な動画がFacebookを中心に拡散され、今回のような事態となった。拡散している大多数の人はこの動画を嘘字幕ネタとして楽しんでいるわけではなく、本気で日本政府が大ハンガリー主義の立場を支持したと受け止め、日本語で「どうもありがとうございました」などと投稿している。

さらに一般人だけでなく、政治家やNGO団体もすっかり信じ込み、本物の国会映像としてこの動画を拡散した。

 100周年の記念日という注目を浴びやすい日時に合わせて投稿するために事前に動画を作成し、動画のコメント欄を閉鎖することでデマであるという指摘を目に入らないようにようにし、「トウキョウ」のような、日本語を知らなくても分かる可能性のある単語が答弁の中で出てきた場合は、字幕の文章にも出てくるようにするなど中々凝っている。

制作者の目的は不明だが、これが本当の国会映像として拡散されてしまえば、国際問題になりかねないだろう。ハンガリーのナショナリストにとっては嬉しい発言であっても、その周辺諸国の国民にとっては自国の現在の領土を危うくする敵対的発言に他ならない。

 ただ、今ではこれがフェイクであることが大体の人に見抜かれ、事実が広まっている。おそらく閉鎖し忘れたであろうチャンネルページのフリートーク欄には怒りの書き込みが殺到した。

ハンガリーのYoutuberやウェブサイトの記事でもこの動画がフェイクであることが取り上げられ、この動画は面白い字幕の上で怒り狂うヒトラーのようだが、制作者は意図的に視聴者を誤解させたと指摘している。

デマを指摘する声の中には、日本人は旧約聖書のゴリアテの喩えなんて使わないだろうというものや、日本語を勉強しているハンガリー人による「音声にあるオミ先生とニシウラ先生はいつこの字幕に出るのかしら?」という皮肉など。

日本語が分からないハンガリー人も、Youtubeの機能であるAIによる自動音声書き起こしによって言葉の壁を超えることでデマであることを看破した。日本語音声を文字に書き起こし、その文字をGoogle翻訳のカメラによってハンガリー語に翻訳したのだ。

フェイクニュースはインターネットによって大量に拡散されるようになったが、それを見破る術もまたインターネットによってもたらされるようだ。

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